気候変動枠組み条約/UNFCCCボン会合:ボン会合総括―COP18 / ドーハに向けて

気候変動プログラム・ディレクターのYです。2週間続いたボンでの気候変動枠組み条約交渉が5月25日(金)に終了しました。一番最初のブログにも書きましたが、今回は以下の4つの交渉が同時並行で進みました。
1. 「気候変動枠組条約第36回補助機関会合(SB36)
2.「条約の下での長期的協力の行動のための第15回特別作業部会(AWG-LCA15)」。
3.「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する第17回特別作業部会(AWG-KP17)
4.「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」

この中で、特に困難を極めたのが4の「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」でした。特に、ADPに関しては、2週間かかってやっと議長の選出とアジェンダの採択で終わった、という結果です。アジェンダの内容も、当初の数ページにわたるCOP17決議に基づく事務局案を、たった1ページに簡素化し、全て「COP17決議に基づき議論していくものであり、如何なる先入観も持たない」という脚注付きにすることでの合意に至りました。これは、何日も費やして実施された非公式会合において、各国が激論を交わし、やっと合意に至ったアジェンダです。そのアジェンダですら、ADPの本会合では、ベネズエラが脚注の扱いについてさらに改訂の扱いをレポートに含めるように要求するなど、混乱は最後の最後まで続き、やっと採択に至りました。
 議長の選出問題に関しての難航をまとめます。そもそも、今回はノルウェイ、インド、トリニーダ・トバゴが各地域から選出され、ADP議長に立候補していました。インドはCOP17のダーバン合意の採択の際、最後まで採択を拒否していた国であり、同じくADPをブロックしてきた中国の強力なバックアップを受けています。トリニーダ・トバゴは、島嶼国連合(AOSIS)に属する国として、より野心的にADPを推し進めていくことが他の途上国から懸念される理由となっています。このように、主に途上国からあがってきた候補国が極端であったため、いくら非公式会合を続けても折り合いがつかなかったわけです。
 結局、議長問題は、やっと以下のように整理されました。
2012-2013年:ノルウェイ、インドが共同議長を務める。ロシアが報告担当官を務める。
2013-2014年:トリニーダ・ドバゴに加え、付属書国(OECD加盟国+移行期経済国(旧ソ連、東欧諸国)から1国を選出、共同議長を務める。付属書国(途上国)の1国が報告担当官を務める。
2015年:非付属書国(途上国)のアフリカグループから1国が共同議長を務め、非付属書国が報告担当官を務める。
 会議に会議を重ね、やっと決着がついたのが、このシナリオです。肝心の2015年の部分は、完全に調整がついてはいない中での見切り発車です。アフリカ・グループも、これから調整、というのが現状でしょう。ともかく、2週間をかけ、議長とアジェンダの採択だけにはこぎつけたわけです。
 思い返せば、2011年の春に開催されたバンコク会合でも、カンクン合意後にも関わらず、途上国がバリ行動計画まで遡って交渉することを主張、アジェンダ・ファイトで終了、続く6月のボン会合においても3日間にわたりアジェンダ・ファイトが繰り広げられるという展開がありました。昨年の状況と良く似ています。一方、今年の交渉を聞いていて、唯一おもしろかった点は、途上国の中でもコスタリカ、ペルー、コロンビア、チリ、島嶼国連合、最貧国など、ADPの推進を強く望む途上国が現れてきたことです。一方で、ADPに強く反対する国々の連合というものも新たに組成されつつあります。今までの途上国対先進国、という構図から、国の存続問題や開発政策から、より積極的に気候変動に立ち向かおうという多くの途上国が出現しました。しかし、それをブロックする中国をはじめとする国々のADPへの反発意識は半端なものではありません。上述した4つの交渉トラックの流れが微妙に影響し合い、先進国の「衡平性」にかける対応への激しい反発へと繋がっています。
 このような微妙なバランスの中、日本がどのようなリーダーシップを今後発揮していくべきなのか。京都議定書の第2約束期間を離脱した国として、ADPにおける牽引力は最低でも発揮しなければいけません。それが理由での離脱であったはずです。対90年比-25%削減という目標を国際的に発表した中、それを取り下げたりした暁には、日本の置かれる立場は国際的に大変厳しいものとなるでしょう。多くの国が、今まで「日本は約束したことを実施するまじめな国」という印象を持ってきました。外交上にも大変重要なこの印象を、是非保持する努力をして頂きたいと思います。

(↓写真:ADPを激しくブロックし続けた中国の交渉の様子。中国は今回の交渉期間中、交渉を後退させることに貢献した国として、NGOより化石賞を受賞した。)


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