国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:迷走を続けるダーバン・プラットフォーム
気候変動プログラム・ディレクターのYです。REDD+のドラフティング・グループはクローズドで延々と続いているため、私たちNGOは入ることができません。一方、先週より議長が決まらずアジェンダすら採択できない「ダーバン・プラットフォーム作業部会(ADP)」が深刻な状況に陥っています。
先週の土曜日に、2回目のADPが開催されました。この時点でもまだ議長の調整がつかず、決定していなかったため、現COP議長である南アの方が副議長となり、せめてアジェンダだけでも先に採択しようと努力されました。そこから、延々と3時間半、アジェンダ・ファイトが始まりました。一番目立って発言し続けたのが、中国です。まずはアジェンダの元はどこか、という質問から入り、その後はアジェンダの内容を重箱の隅をつつくように、しかも全て関連づけずつおかしいとの議論を展開。これに対して、同じ途上国であり島嶼国連合(AOSIS)でもあるグレナダからは、「よくそこまで遡って議論が展開できるものだ」という皮肉とともに、迅速にアジェンダの採択を求める発言が出されました。それでも、全く治まる様子はなく、マイク独占状態での展開。そこで同じく島嶼国連合のバルバドスより、「2020年に向け、我々は大変な状況に瀕している。時間がない中、とにかく前に進め、サブスタンスを話さなければとんでもない手遅れになる」という発言をしたところ、会場は拍手喝采に包まれました。すると、中国は「国連という場は、各国が言いたいことを言う場であるべきだから、一つの国を非難するような発言は、二度と許されてはいけない!」と逆切れ。驚いたことに、この発言にも会場中から大きな拍手が起こりました。びっくりして周りを見回すと、ものすごい数の中国代表団の方たちがいらっしゃって、拍手をされていました。しかし、この発言は、他にも反対の発言をしている途上国があった中、自らの非を認める墓穴となり、すかさずスイスが「バルバドスの発言は決して一国に対する非難での発言ではない。」と、応酬されていました。
3時間半の間、フィリピンが妥協案を出したものの、その内容が緩和の野心を下げるものであるため、先進国が合意しなかったり、シンガポールがさらにCOP17に基づくという一文を入れることで全てがクリアになるという案を出し、多くの国が賛同したものの、結局中国が却下。最後は、「中国はフィリピンの案を呑むと妥協しているのに、なんでみんな中国の意見を聞いてくれないんだ」といじけモードに。これに対して、南アの議長(女性)は、すかさず「心配しないで、私は全ての国の意見を聞いているわよ。なんてったて、私は女だから、マルチタスクには慣れていますから」と返していました。この発言に、私は一番笑いました。サブスタンスを話し合っているはずの国連の場で、なんで笑わなければいけないのか、後から落ち込みました。
長くなりましたが、ADPでのやり取りを見ていると、途上国側に削減や野心を下げようと言う思惑が広く蔓延していることが良く分かります。昨年2日以上遅れて採択した「ダーバン合意」が暗礁に乗り上げてしまいました。次の会合は現地時間明日(火曜)午前中です。これ以上の遅延は、ボンで何らかの成果をあげるためには致命的です。明日の時点で、牽引力のある議長が誕生していることを、心より祈るばかりです。