国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:交渉2日目にて、LCA交渉スタック
気候変動プログラム・ディレクターのYです。昨日、いきなり「条約の下での長期的協力の行動のための第15回特別作業部会(AWG-LCA15)」で各国の主張が折り合わず、会議がスタックしました。国連の会合の慣習として、午前中は今回より議長に就任したサウジアラビアの議長への謝辞や支援表明などが延々と続く中、スイスが「一般的な発言に留めるべきか、アジェンダに関して言及すべきか」と、一度牽制を入れました。議長は、「ひとまず一般的な発言で、アジェンダに関する発言は後で」と指示しました。午後からのLCAがもめそうな気配が会場に漂い始めました。
LCAは2012年中に閉会し、「ダーバンプラットフォーム作業部会」に移行していくことが前提とされていますが、実はそう簡単にはいかないことが以前より予測されていました。というのも、そもそも条約の根本的な目標ともいえる「共有ビジョン」など、いくつかの重要なアジェンダについて、COP17で合意することができず、持ちこされていたからです。
会場は、COP17で引き続き議論することが合意されている事項のみを協議すべきだという米国等を中心とした先進国と、議長案に書かれている、一部バリ行動計画を含む内容を再度協議すべきだという意見で割れました。多くの国の発言が続き、予定を大幅にオーバーする中、珍しくLCAチェアが「自分の物語を聞いてほしい」と、長々と語りべを始めました。
あまりにも長かったので、かいつまみます。昔々多くの人々がバリ・アクション計画という名の家を建てようと、タウン・コミュニティを作りあげた。一方、多くの人々の思惑が交錯し、フロアプランが決まらない中、タウン・コミュニティから離れていく人々も出始めた。2年以上という時間がたった今、状況が全く変わってしまった。今こそ、残された課題を全て解決し、話し合い共同で家を建てるための最後のチャンス。みんなで各アジェンダについて話す場を設けようではないか、どうか協力して欲しい。
この物語への感想として、米国のパーシング米気候変動副特使が、すかさず「2年という期間が過ぎてしまった家作り計画は、個人がそれぞれ街づくり自体についても違うアイディアをどんどん考案し、ホテルを建設したいと考えている人もいるはず。現実的な方法で前に進むべき」とばっさり。
シンガポールの交渉官が折衷案として提案した「COP17で決定していた議題について話すスピンオフグループと、それ以外の事についてLCAで話すべきことについて話すコンタクトグループを別々に発足させ、LCAの今後のアジェンダについて話すことを決定する」という案も、多くの国の賛同を得たものの、メキシコや米国が納得せず合意に至ることはできませんでした。LCAは、開始1日目にして、早くもインフォーマルにコンサルテーションを行い、次の策を練るという展開に持ち込まれています。
昨年のボン会合では、3日間アジェンダ・ファイトが続きました。今回は、各国がアジェンダ・ファイトを避けると明言するものの、結局展開として何が違うのか、と聞かれると私には分かりません。議長自らが議長席で語り部をする姿を初めて見ました。本日(現地水曜日)夕方、インフォーマルなコンサルテーションの結果が分かる予定(あくまでも予定)になっています。
*写真:サウジアラビアの新議長の下、始まったLCA会議